【米道具特集】vol1.
おひつ - 炊きたてはさがけ米を美味しく保存する魔法の容器の使い方
文責:古庭屋商店・小林茂和/写真:古庭屋商店・小林茂和/最終更新日:2020.12.14
おひつを使うのは何のため?
炊きたてはさがけ米を美味しく保存する魔法の容器
保温機能はついていません
私たちの生活の場から遠ざかって久しい「おひつ」。今は炊飯器の保温機能でご飯を保存したり、炊きたてを冷凍保存する方も多いと思います。炊飯器や冷蔵(冷凍)庫が登場するまでは、長い間、おひつがご飯を保存する役を担ってきました。
炊飯器や冷蔵庫がない時代に幼少期を過ごした秋田のお婆ちゃんたちに話を聞くと、かまどや土鍋などでご飯を炊くのは日に一度、朝食時だけのことが多かったようで、晩ご飯は朝に炊いておひつで保存したご飯を食べていたようです。もちろん、おひつには保温スイッチはついていないし、当時は電子レンジもありませんから、夜には冷めたご飯を食べていたんですって(ワラで編んだおひつ用の保温ケースもあったそうです)!
おひつでご飯
日本の素敵な食文化です
改めて注目される、おひつの底力
無垢材、塗装なし、がおすすめ
木製の他、陶器やセラミックなど、おひつにもいくつか種類があります。おすすめしたいのは、やはり木製のおひつ。
木製のおひつにもヒノキ、サワラ、スギなど素材に違いがあり、また、漆塗りやウレタン塗装などを施したおひつもあります。それぞれメリット・デメリットがありますが、ご飯を美味しく食べることを念頭に置くと、木の香りがご飯の香りの邪魔をしない素材「サワラ or スギ」で、漆塗りやウレタン塗装よりも天然木の調湿作用が活きている「塗装なし」のおひつをおすすめします。
天然無垢材の調湿作用がご飯を美味しく!
無垢の天然木には調湿作用があります。天然無垢材でできた木のおひつに炊きあがったばかりのご飯を入れると、その湯気・水分を適度に吸収してくれます。
もちろん、全ては吸収しきれずに、蓋の裏側に水滴がつきますが、水分の多くをおひつ全体で吸収してくれているので、ご飯の上に水滴がポタポタ落ちません。
また、しばらくしてご飯の水分が少なくなってくると、おひつ全体で吸収した水分を少しずつ放出し、ご飯が乾燥しすぎないように調節してくれます。つまり、炊いてから時間が経ったご飯も素晴らしく美味しいのです。
炊きたてご飯をおひつに移します。
ご飯をおいしく保存するコツです。
冷めたご飯はレンジでチン!
家族揃って食卓を囲める場合は良いのですが、食事の時間が別々になってしまう場合、最初に食事をする人に合わせてご飯を炊かざるを得ません。おひつには保温機能はありませんから、後から食事をされる方のご飯は冷めてしまいます。そんな時はどうか電子レンジで温めてください。
当店が販売する遠藤桶製作所さんの女将さんは「ご飯を温める程度なら電子レンジを使っても大丈夫ですよ。」と仰ってくれていますが、当店としてはお茶碗に移してからの電子レンジのご利用を推奨しております。また、漆塗りやその他素材などの場合は各メーカーさんの注意書きに従ってください。
食卓に天然素材のぬくもりと
職人さんの匠の技を
天然木のおひつ メリット・デメリット
【メリット】
◆ご飯が美味しくなる:適度な水分量を保つからご飯が美味しい!
◆調湿作用:余分な水気を吸収する、吸収しすぎない。水分が足りなければ加湿する作用があります。
◆抗菌作用:抗菌作用があると言われています。
◆機能美の美しさ:飾りのための飾りじゃなく、形の全てに意味があります。まるでイチロー選手のような美しさ。
◆天然素材のぬくもりと、匠の技を食卓に:天然素材でひとつひとつ丁寧に作られた、日本の伝統と職人さんの技が食卓を彩ります。
【デメリット】
◆天然素材ですから、お手入れを怠れません。
おひつはこんな方におすすめ
1. ご飯をもっと美味しく食べたい方に
保存方法を見直すだけで、ご飯が一層美味しくなります。炊飯器、ルクルーゼ、バーミキュラ…、土鍋でも、かまどでも飯ごうでも(!?)構いません。炊きたてのご飯をおひつに移して保存してみてください。このひと手間でご飯がより美味しくなります。
2. 炊きたてを食べられないご家族にも、美味しいご飯を食べさせたい方に
仕事、部活、塾などなど、食事のタイミングが揃わない理由はそれぞれですが、皆に美味しいご飯を食べさせたい気持ちは変わりません。おひつを使うことで、皆が美味しいご飯を食べられます。
3. 日本の伝統技術を子供たち、次世代に残したいと思う方に
日本の豊かな自然と文化によって育まれた伝統の技。安価で便利な代替品が台頭し、消えゆく運命なのかもしれませんが、残っていた方が豊かで楽しい社会のように思うのです。
伝統技術が残っていくためには、日々の生活で使ってくれる人が一定数必要なのです。
桶を修理する
秋田の桶・おひつ職人、遠藤政太郎さん
おひつの使い方
購入したら下準備をします
購入後、下準備せずに水洗いのみで使用することもできますが、木材の色がご飯に移ることありますので、アク抜きをおすすめします。
1. お米のとぎ汁をおひつに溜めます。
2. このまま2,3時間おいて中の水を捨てます。
3. 軽く水洗いし、陰干しし乾かします。
4. これで準備完了です。
とぎ汁を入れて2,3時間
その後、中を軽く水洗いします
ご飯を保存する前には水で濡らします
ご飯がくっつかないようにしゃもじを水でぬらす感覚で、おひつも水で濡らしておきます。
おひつを事前に濡らすと、おひつが吸収する水分量は減り、蓋の裏側に水滴がつきますが、ポタポタ落ちるほどではありません。それでも気になる場合は蓋との間に布巾を一枚はさみましょう。
ご飯は中央にこんもりと
炊きたてご飯をおひつに移す際、中央にこんもりと盛りましょう。
すぐに蓋を閉めます。
蓋の裏側につく水滴がご飯に落ちるかも…、と気になる場合は、蓋をする際に布巾を一枚挟んでください。
おひつに移した炊きたてご飯
中央にこんもりと
おひつのお手入れ方法
必ず”陰干し”を
使用後のひと手間が大事
おひつを使った後は水洗いします。くっついたご飯はたわしで洗い落としましょう。漆塗りやウレタン塗装の場合は食器用洗剤が使えますが、無垢の天然木のおひつには食器用洗剤は使えません。また、食器洗い機も使えません。
たわしで水洗いした後は、風通しの良い場所で陰干しします。
日の当たる場所での乾燥や、ドライヤーの風を当てる、浴室乾燥などは避けてください。
洗ったおひつは水気をよく切り、
風通しのよい場所で陰干しします
下部に隙間がある水切りカゴ(竹製)が便利
風情がありますね
ぜひお手元にお届けしたい
無塗装・無垢材の「天然秋田杉おひつ」
希少価値の高い天然秋田杉のおひつ
すでに伐採が禁止されている天然秋田杉を使い、無塗装・無垢材のおひつがまだ(ひっそりと)作られています。それは秋田県横手市平鹿町「遠藤桶製作所」さんの三代目、遠藤政太郎さんの手によるもの。政太郎さんも齢80を超え、木桶や樽の修理なども受けながら、ゆったりとしたペースでおひつを作っています。
そんな貴重なおひつ、あなたのお手元にお届けできたら幸いです。