食材に木の香りが移らない
シナノキ経木
「古川経木」
東北最後の経木工房
古川経木 二代目
古川安宏さんのシナノキ経木
現在品切れ中です。
再入荷までしばしお待ちください。
文責:古庭屋商店・小林茂和
写真:古庭屋商店・小林茂和
最終更新日:2021.5.3
作っているのは、こんな方。
東北の、雪の多い地域の男は格好イイ。
私が古庭屋のバイヤーとして東北地方の多くの人に会う中で感じてきたことですが、古川さんも例に漏れず芯があって格好良い方でした。
岩手県中西部、奥羽山脈東麓に位置し豪雪地帯に指定されている雫石市。12月末も結構な雪でした。雪の多いエリアで生まれた宿命を受け入れて、雪と対峙しながらそこで暮らし、一国一城の主としてビジネスをしながら生きいくという選択をした覚悟のようなモノを感じるからでしょうか。滲みでる格好良さがあります。
事実、この東北で経木製造業を営むのは、この古川経木さん1軒のみとなりました。(古川さん曰く「他に北海道には2軒、群馬に1軒、広島に1軒あるのは知ってるなぁ。」そうそう、「人と同じことやってちゃぁダメよ。」とも仰ってました。)
食材の風味を邪魔しないのが、
シナノキ経木の特徴
こちら、古川経木さんでは、シナ(榀)の木を使って経木を作っています。東北地方ではマダ、マダノキとも呼ばれ、その樹皮から取れる丈夫な繊維を使って布を作り縄をない、古くから生活に密着していた木です。
シナの木で作った経木の特長は、白くて、柔らかくて、クセが少ないこと。そしてほとんど無香であることです。
古川さん曰く、「仙台より南ではアカマツの経木が使われ、仙台より北ではシナの木の経木が使われる。こっち(東北)の方の人はアカマツの経木の香りを嫌がる人が多いんだよなぁ。関東の人たちはあの香りが好きって聞くよ。俺は嫌いじゃないけどね(笑)。人それぞれなんだけどね。」
お米を美味しく食べることがメインテーマである私たちとしては「お米本来の香りを堪能していただけたら」と思うので、シナの木の経木をお勧めしたいのです。
経木の作り方 @古川経木
1. まずは原木。シナの木の原木を仕入れます。
2. これを直方体にカット。
3. 2を乾燥させずに、水分を含んだ状態のまま巨大な鰹節削り器のような機械で薄くスライスしていきます。
4. 一定量を重ねて束にし乾燥室に吊るし、扇風機で風を送り乾かします。
5. 束を重ねて上から重しを乗せてクセを取って完成です。
※丸太から直方体を切り出した後の端材や削りかすは冬に暖房用の薪や焚き付けとして利用され、燃えた後の灰は畑へと巡ります。
人にも環境にも優しい経木
製造工程をみればわかる様に、経木は天然の木を薄く削って乾かした無垢の木そのものです。化学的に作り出された”何か”を副原料に使うわけでもないので食材を包んでも安心です。使用後は土に埋めれば分解されて土に戻るし、燃えるゴミとして燃やされても最早燃焼のためのバイオマス燃料ですね。
製造工程でも電気を少々使うのみだから環境への負荷も小さい。丸太から直方体を切り取った後の端材や削りかすは、冬の暖房に薪や焚き付けとして使われるから無駄がないし、暖房のためのに使われるガスや灯油の削減になります。そして、山から木を切り出すことは山を手入れすることにつながり、里山の維持につながります。手入れされた里山は人と動物との境界線となり、獣害を減らすのにも役立っていることでしょう。
改めて言います。昭和52年生まれだから経木を実体験として知りません。だから懐古主義ではないのです。こうしてしっかり見つめてみたら「これ以上素晴らしい包装材はない」と思いませんか?